長く続く腰痛、お尻の痛み 原因は「腰」だけとは限りません
様々な視点の重要性
The Importance of Diverse Perspectives
画像分析
左右差や形態だけで異常と判断するのではなく、その所見が現在の症状に関係しているのかを確認することが重要です。
(※画像データをお持ちの方は、可能であればご持参ください。)
歪みによる身体のバランス
人間の身体は完全な左右対称ではないため、骨盤の左右差だけを見て「歪んでいる」と判断することはありません。
重要なのは、その差によって、動きに障害が起きているかどうかです。
靭帯による仙腸関節の安定
・ 長時間座れない
・ 片側のお尻に体重をかけると痛い
・ 歩いていると徐々に痛む
といった症状に繋がることがあります。
神経障害
殿部から脚にかけての痛み、筋力低下(踏ん張りが効かない)、異常歩行(つまづく)、下肢の痺れなどの原因になる可能性もあります。
腰痛と股関節障害の鑑別診断
腰部の障害(猫背や反り腰)、股関節の可動域制限(引っ掛かり)など、身体を庇うことで生じた姿勢や動作の変化でも、似た場所に症状が現れることがあります。
そのため、「どこが痛いのか」だけでなく、「どの動きで症状が変わるのか」まで確認しながら、問題となっている部位を絞り込んでいきます。
画像がなくても各種検査で問題点を見つけ出す
「立つ」・「座る」・「歩く」といった基本動作からも、多くの情報を得ることが出来るため、画像の有無に関わらず、現在の身体反応を確認することが大切になります。
仙腸関節と痛み
Sacroiliac Joint Pain
痛みの種類と原因
当院では臨床上、大きく3つの視点から状態を整理しています。
①関節の動きに伴う負担
②周囲靱帯や支持組織への負担
③神経症状を伴うもの
実際には、この3つが完全に分かれおらず、複数の問題が重なっているケースも少なくありません。
①関節自体への負担
立ち上がり、寝返り、歩き始めなど、特定の動作で痛みが現れることがあります。
この場合に重要なのは、「関節の動きが不足しているのか、それとも動き過ぎているのか」を見極めることです。
骨盤ベルトのような固定で制限を掛けてしまうことで腰部や股関節にまで負担を感じる方もいます。
そのため、「硬いから動かす」・「痛いから固定する」と一律に考えず、その方の身体反応を確認しながら治療方法を選択します。
②周囲の靱帯による痛み
関節周囲の支持性が低下すると、関節を支えている靭帯や周辺組織へ繰り返しの負担が掛かり、「長時間座る」・「立ち続ける」・「歩き続ける」ことで症状が強くなることがあります。
骨盤ベルトで症状が軽減したり、反対にAKAやSJF、アジャストなどで関節を緩めると痛みが悪化する場合は不安定性が疑われます。
ただし、痛めている靱帯ごとに関節の不安定を起こしている方向が異なるため、一つ一つの動作を細かく分析する事が必要で、難治例にもなりやすい問題です。
③神経による痛み
殿部痛だけでなく、「脚の痺れ」・「力の入りにくさ」・「足の感覚の違い」・「歩きにくさ」などを伴う場合には、腰椎から続く神経系の評価が重要になります。
腰椎、骨盤、股関節など、神経が走行する周辺組織の確認を行い、「どの部位への介入で症状が変化するか」をみながら治療方針を考えていきます。
大きく3つに分けていますが、
〇腰部の問題によって殿部周囲の筋緊張や身体の使い方が変化し、その結果として関節周囲への負担が集中しているケース
〇関節周囲の支持性や動きの変化によって、腰椎や股関節が代償し、別の症状まで加わっているケース
など、実際の症例では複数の問題が重なっていることも難治例の原因になります。
仙腸関節と関連疾患
Sacroiliac Joint Multimorbidity
腰部が及ぼす影響
仙腸関節と腰部の関連
靭帯による仙腸関節の安定
参考文献:腰痛が姿勢を制御する筋肉に与える影響
既往歴からも原因を探る
複数の病態の混在が治療の複雑化に繋がる
実際の症例です。
元々腰痛があり、立ち仕事が辛くマッサージで痛みのコントロールをしていたが、長時間の座り話後から仙腸関節の痛みに変化。
それ以降座っての作業が出来なくなり、立っているか横になるかをして極力座らないようになる。
ブロック注射では直後の痛みは軽減するも効果が数時間程度で持続せず、バキボキ鳴らす治療やストレッチの治療後から更に悪化し、最終的に立っているのも辛くなり、日常は横になって過ごすようになる。
このように、いくら仙腸関節を治療しても効果が出ない、逆に悪化してしまうケースがあります。
そのため、症状がどのような順番で始まり、何をしたときに変化したのかを整理し、治療すべき優先順位を見つけていく、長期間改善していない方ほど、この「症状の時系列」を確認することが重要になります。
参考文献:仙腸関節障害における手技と運動療法の効率
椎間板症・椎間板ヘルニア・神経根障害
椎間板への力学的負荷を読み取る
仙腸関節に症状がある方でも、腰椎椎間板や神経根の問題が同時に存在することがあります。
そのため、殿部痛や下肢症状がある場合には、腰椎の状態も確認することが重要です。
椎間板ヘルニアでは、椎間板組織が後方や後外方へ突出・脱出することをいい、位置や大きさによって神経根などに影響を与える場合があります。
一方、脊柱管狭窄症は、椎間板だけでなく、椎間関節や靭帯など複数の組織によって神経の通り道が狭くなることが原因で、障害が起きていきます。
MRIでは椎間板の突出だけでなく、椎間板の変性や椎体終板の変性(Modic変性)などが確認されることがあります。
ただし、画像上に変化があるからといって、それが痛みの原因とは限りません。
画像所見と、「どの姿勢で痛くなるのか」・「どの方向へ動くと症状が変化するか」・「神経学的な異常があるか」を確認しながら、症状との関連を調べていきます。
参考文献:腰痛に対する仙腸関節障害の有病率
座位と立位での仙腸関節の力学的変化
座っていられない、長い時間歩けない
参考文献:仙腸関節痛の診断と治療の選択肢
股関節が及ぼす影響
障害との関連性
寛骨は両関節の構成に関与
可動域制限
後ろから見ている図
参考文献:鼠径部痛に対する保存的治療の最適化
仙腸関節障害とFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)
足を踏み込むとお尻から鼠径部が痛む
股関節を深く曲げたり回旋させたりしたときに、大腿骨と寛骨臼周囲で衝突が起こり、鼠径部痛などが現れることがあります。
骨盤の前後傾によって股関節の機能的な可動域やインピンジメントが起こる位置が変化することも報告されています。
そのため、鼠径部痛に対して一般的な骨盤後傾トレーニングが行われますが、それがきっかけで仙腸関節に負担が掛かる場合があります。
大切なのは、「骨盤を後傾させること」そのものではなく、各関節の関連性を確認したうえで、その方に必要な動きを選択する事です。
仙腸関節障害
神経痛?股関節症状?
仙腸関節への治療によって股関節の動きや殿部周囲の動きも変化していきます。しかし、だからといって「すべて仙腸関節を治療すればいい」ということではありません。
むしろ重要なのは、「なぜ負担が掛かるようになったのか」という点です。
骨盤を安定させる筋肉や靭帯は、腰椎・骨盤・股関節と相互に関係しています。
腰椎や股関節の機能が低下した結果、仙腸関節周囲への負担が増加している場合もあれば、反対に仙腸関節の問題を腰椎や股関節が補っている場合もあります。
そのため、各々を切り離して考えないことが重要です。
参考文献:股関節障害と仙腸関節異常
変形性腰椎症 側弯症
画像診断と力学的分析
Sacroiliac Joint
仙腸関節の障害
仙腸関節が及ぼす様々な症状
仙腸関節と坐骨神経との関連
脊椎の検査治療・仙腸関節の検査治療
各治療法による効果の期待値
| 治療の種類 | 役割 | ポイント |
| ブロック注射 | <痛みを見つけるための検査> ・仙腸関節ブロックを分けると「仙腸関節腔」、「周囲神経」、「関節周囲の靭帯」の三つがある。どこへの注射がどの程度の効果だったのかによって「あなたが抱えている仙腸関節障害」がどの組織だったのかが予測できる。 |
・効果の有無、痛み軽減の持続時間から病態と程度が予測できるのでブロック注射を行った場合は、教えてください。 |
| 固定 | <着けている間の仙腸関節安定> |
・ベルトによる動きの制限が起きるため、腰部や股関節など別部位の痛みが出ることがある。これを主症状と思い込んでしまう場合があるため、痛みの出た順序が重要となります。 |
| 鍼 | <検査と一時的な鎮痛> ・鍼自体に鎮痛作用があるため、その効果は期待できる。 |
・複数本刺すため、実際に何処で効果が出たのか判断がしずらい。 ・ブロック注射と同様に検査の役割が強く、鍼自体に治療効果はないため、時間経過と共に薄れていく。 |
| 運動 | <根本的な解決には繋がらない> ・自身で動かせる関節ではない。 |
・痛みが強い場合、動かすことが逆効果になる。 ・脊椎や股関節の動きによって相対的な変化は期待できる。 |
| ストレッチ | <根本的な解決には繋がらない> ・捻挫の様に関節が緩んだケースには悪影響となる。 |
・仙腸関節を固定する効果はない。 ・腰部や股関節の柔軟性向上でストレス軽減は期待できる。 |
股関節・膝・足が及ぼす影響
人間は歩行する際、下からの床反力を常に受けています。
運動連鎖が正常に作用していれば痛みなどは起きませんが、怪我や日常の姿勢によって運動連鎖が崩れると痛みや痺れとして身体に現れます。
腰椎や骨盤は足首や膝がどんな位置に存在しているかによって、負担のかかる場所が変わってきます。例えば過去に足関節捻挫の既往がある場合、小指側に体重が乗りやすくなる内反足になる傾向にあります。
内反足になった場合、バランスを取るため様々な関節が代償を行いますが、腰椎や骨盤が代償を行った場合、腰椎や骨盤は身体の中心よりも外側に引っ張られます。
骨が外側に引っ張られると腰方形筋や腹斜筋、殿筋群の筋肉が過緊張を起こし腰痛や股関節障害になったり、外側に偏位した骨が神経を圧迫し神経痛などを引き起こします。
ランニングをやっている方に多く起こるタイプの腰痛であるため、こちらのページも参考にして下さい。
ランニング障害 スポーツコンディショニング
関連部位の症例動画
腰部脊柱管狭窄症による足の運動障害
【足が上手く動かない・指先の感覚が鈍い】
このような症状では、腰や骨盤の治療をすることによって、一回目から効果が実感できる場合が多いです。もちろん一回で症状を全てなくすことは出来ませんが、回数を重ねるごとに動きが良くなっていきます。
スポーツ外傷と身体の癖の関係(肉離れ)
こちらは腰の症状ではありませんが、外傷後痛みが引かない・再発する原因には神経障害が隠れている可能性が高いです。
動作分析と共に肉離れと腰の関係について説明しています。
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|---|---|
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